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道重さゆみの『シンデレラ』

2008.10.16(木)
道重さゆみの『シンデレラ』

 『シンデレラ』に関しては、現場に縁のない痛井ッ亭。が言うべきことはないので、かめちゃんがポーシャ役で頑張ったことについても何も触れていませんでした。
 なのに、このタイミングで『シンデレラ』に触れるのは、ネット徘徊系廃人ヲタとして、道重さゆみに、道重さゆみの思いに心から共感して胸が震えたからです。
 あー、このままシゲさんヲタになってしまいそう。
 ま、そうはいっても、かめちゃん溺愛なんで、絶対的な一推しの地位はいささかも揺るがないので、かめちゃんは安心すること!

 しかし、ここでは道重さゆみの話をするのだ。
 『シンデレラ』では、リーダー高橋愛が主役のシンデレラ、これは実力からみてそれしかない配役であって、決して事務所のえこひいきとか言う話ではない。相手役の王子様は新垣里沙、この役はどの程度重みがあるのか正直よく分からない。そして、亀井絵里と田中れいながポーシャとジョイというイジワルな義姉の役、これはかなりセリフも多く、劇の雰囲気を盛り立てる重要な役だった様子。
 劇のストーリーにおいて欠かせない意味を持つ重要な役どころはここまで。そして、現モーニング娘。の中核である56期メンバーで、ここまでで名前が出ていないのは唯一人、道重さゆみ。
 78期も比較的不遇な役を当てられている様子だが、6期なのに、8期の後輩とワンセットで「妖精」の役、しかもセリフのない役を当てられれば、さすがにショックを受けるなというほうが無理だろう。
 その昔、小学校の学芸会などでは「立ち木の役」なんてものがあったらしい。都市伝説かもしれないけれど。今そんなことをすればモンスターペアレンツが学校に来襲すること請け合いだ。道重さゆみは、ヤンタンでさんま師匠に、お前はどんな役やワカメか、と、おちょくられて、「まあどちらかといえばワカメに近いです」と答えていた。立ち木の役みたいなものだ、と。
 もちろん、道重さゆみはその役を受け入れ、自分を納得させようと努めたはずだ。運動音痴でダンスも下手だし、歌唱力に到っては、さすがに6期オーディションの驚愕こそ昔の話とはいえ、まだまだ、歌唱力?なにそれ?食えるの?ってか、歌の良し悪しは歌唱力とは関係ないよ、という呪文を唱えるぐらいしかできない自分であることは、もちろん自覚している。歌と踊りが重要なミュージカルの舞台で自分に大役が来るなんて甘い夢は見ていない。でも。

 先日(10.11)のヤンタンで、高橋愛の代役として出演した亀井絵里を交えて『シンデレラ』の話になったとき、かめちゃんにはセリフがたくさんあったので、さんま師匠は「道重は負けたんか」と茶化し(勝ち負けで物事を判断するこの茶化し方はいかにも下衆だが、あえて下衆に徹するのがさんま師匠の芸風でもあり体質でもあるのでしかたがない)、それに対して道重さゆみは「惨敗です」と答えている。亀井絵里は、さゆはフライング(空中飛行)をやったのでそれは羨ましかった、と優しくフォローしていたのだが、それすらさんま師匠にネタにされてしまった。上から目線で哀れまれるのもイヤやな。

 道重さゆみは、自らのソロラジオ番組こんうさP(9.23)で、すでに、セリフがないことにショックを受けたという報告をしていた。

 シンデレラの台本を初めて見た瞬間の天使さゆみと小悪魔さゆみです。
 天使「セリフは少ないけどその分踊りでがんばるわ」
 小悪魔「助かった」
 いやこれ結構ねぇ、両方あるんですよね。あのホントに初め、台本をもらって見た時、ホントにあの、ビックリっていうか、あの、なんかショックで、ホント、セリフが無い事に関して、初めホントに、あの、本番は作ってくださって、あの、何回か口を開いて言葉を発したんですけど、初め台本読みとかは何もセリフを発してなかったんですね。だから、『その分踊りで頑張るわ』っていう前向きにすらなれなくて、『さゆみはこの一ヶ月何をして過ごすんだろう?』と思って。『えっ、何をするの?』って、本当に『どうしよう』って思ってたんですけど、こうなんか、先生とかもやっぱちゃんと考えてくれてて、振り付けでちゃんと、あの、ちゃんと妖精は、ここでこういう役目をするからね、って説明を受けて、ちゃんと自分の中では納得して、あの、ステージに立ったんですけど、こうセリフをもらった時、『まぁ、お妃様探しですって?』って言われた時に、すごいそのセリフを説明してくれる方が『道重さんにすごく難しいセリフがきました』って言い方で言われたんですよ。で、そのセリフ、だからさゆみすごく長いのかなと思って、すごい緊張してたんです。したら『お妃様探しですって?』だったんですね。『あっ、難しいですね〜』って言って(笑)でも、でもその中ではやっぱり、あの〜難しいって言ってくださったけど、あの多分、そう言ってハードルを上げといて、『簡単だから安心してね』っていう優しさだと思うんですけど、さゆみにとっては、すごい逆にそれがもうなんか傷ついちゃって、すごいショックだったんですけど、でも結果、すごい『シンデレラ the ミュージカル』は、ハイ、すごい楽しかったし、すごい大成功に終わったと思うので、ハイ、ホントに良かったなと思います。

 そして今週のこんうさP(10.14)の『今週のお姉ちゃん』のコーナーで、問題の核心に触れる発言があった。この発言は「お姉ちゃんは人を苦しめようとか、醜い部分はない」という流れで、お姉ちゃんがいかに優しい人かを説明するためになされた発言である。そして、道重さゆみが最近一番お姉ちゃんの優しさを身に染みて感じたのは、『シンデレラ』の時期だったのだ。

 さゆみ、ぶっちゃけで言いますと、あの、シンデレラの時期、すごい、おうちで態度悪かったんですよ(笑)ふふふ。あのねホントにね、毎日毎日、同じ場所に行って、あのー、なんか多分性にあってないっていうか、毎日毎日同じ場所に行って、毎日2回公演で、こう毎日毎日同じことして着替えもたくさんあって、着替えたくさんあるのにセリフはまったくないし、もうなんかもう、なんかちょっと、ちょっとおかしくなってたんですよさゆみ、ちょっとまあぶっちゃけ今、今だから言えるんですけどちょっとおかしくなって。だからおうち帰っても、誰が悪いわけじゃなくて、喋らなかったんですよ、てか喋れなかったんです。なんか、舞台の上で喋ってないからかわかんないんですけどうちでも喋れなくて。もうホントに喋らなくなっちゃって。もうとりあえず、なにを言われても「うん」とか、お母さんに、お母さんもすごい、なんかその時期さゆみに気を遣ってくれてて、「お風呂入る?」とか言っても、あーちょっと喋ったら泣きそうなんですけどそのこと考えたら、「うん」とかなんか「うん今いいや」とかそういうことしか喋れなくなっちゃって。ホントに(聞き取り不能)のことを考えたらなんかホントにおかしくなってたんですよ。で、そういう時もやっぱり、あの、お姉ちゃんは……こう……(笑)泣きそうなんですけど(笑)……お姉ちゃんも、なんか……すごい……なんか……支えてくれて……すごい良かったなあ、と。もうイヤ(笑)……もうイヤだ恥ずかしい、もうイヤだ、ちょっともうホントすいませんねもうこんなね、すごいね、お姉ちゃんに支えてもらったなあと思って、良かったなあと思います。じゃあ続いていきますね、気を取り直して行きます。

 この発言がネット上(とはいえ「狼」界隈にすぎないが)で大騒ぎになったのは何故だろう。道重さゆみが貰った役に不満を言っている、ということが問題なのであれば、9月23日の時点でそうなってもよかったはず。しかし、そうではなく、今このタイミングで問題視されるに到ったのは、その時期彼女がおかしくなるほど落ち込んで、不貞腐れていたことを自ら告白し、ラジオであわや泣きそうになったからなのだろう。
 この件に関して、私が言いたいことは唯ひとつしかない。
 道重さゆみの涙は、役への不満、セリフがなかったことへの抗議でもないし、断じて「事務所の高橋愛ゴリ推し」への批判でなどあるはずもない、ましてやそれを「造反」と捉えることなどまったく不当だということだ。それは単に発言の解釈として不当なだけではない。道重さゆみの発言の真実性の持つ美しさを捉えそこねている点においても、彼女の魅力を正当に評価できないことにおいても、何重にも不当なのである。
 もちろん道重さゆみには、もらえた役柄への不満やショックは当然あった。しかし、ラジオで喋りながら泣きそうになったのは、そのためではない。
 あの涙は、そんなことで落ち込んでしまい、不貞腐れて、何の罪もない家族に対してさえ態度が悪くなってしまった自分自身の弱さ、不甲斐なさに対する悔し泣きなのだ。わたしはそう思う。だからこそ、お姉ちゃんの優しさが身に染みるだけではなく、そうやって慰められている自分を、今また思い出しながら泣きそうになっている自分を、彼女は「恥ずかしい」と言ったのだ。この「恥ずかしい」という言葉には、彼女の誇りが、自尊心が、意地が込められている。
 ラジオで本音を曝け出せることは、道重さゆみの強さだ。
 本当の感情で溢れてしまい、あられもなく取り乱してしまった道重さゆみは、途方もなく美しい。あたりさわりのないタテマエの羅列、毒にも薬にもならない安全な笑顔を振りまく「アイドル」を、彼女は超越する。その美しさは、彼女自身が表現する高度なアイドル性や、写真集やDVDで見せる極上のエロス表現にも増して、尊く、真に感動的な、人間性そのものの美しさなのだ。

[2008.10.16]